日本企業は、ITを上手く使えていないということがよく言われています。
ITの利用については、SIerやコンサルティングファームに頼っていることが多く、ITを専門にしていない企業ではITがわかる社員も少ないために、どうしても効果的なIT利用ができていないようです。
とはいえ、会社で業務をする上でITを全く利用しないということはほとんどなくなってきていますので、IT活用の目的を正しく捉えることで自社でITが有効に活用できているかの指針としていただけるように本記事を書くことにします。
IT活用の目的
早速ですが、IT活用の目的は大きくわけると以下の2点になります。
- コスト削減
- 売上拡大
細かく考えれば、他にも色々あるかと思いますが突き詰めるとこの2点になります。
例えば、eメールや社内掲示板のようなコミュニケーションシステムの利用目的を考えてみます。
eメールを郵便物による情報伝達手段の置き換えと考えたときには単純に情報伝達にかかるスピードが削減できます。情報伝達の遅延による機会損失をおさえることができるようになりますので、コスト削減は当然のこと、先物取引等でスピード優先の情報であれば売上拡大にも貢献することになります。
つまりコミュニケーション系のシステム導入であっても突き詰めていくとコスト削減や売上拡大につながっていくのです。
会社経営においては売上と収益を向上することは大前提であるため、ITを有効に利用することで、この2つの目的が達成できるとしたら、正しく理解して有効に活用したいと考えるのは当然のことでしょう。
コスト削減に寄与するIT
そして、IT活用が最も効果を発揮するのはコスト削減になります。
様々なシステムは大量の計算を人間の代わりに実行することができます。
あらかじめ決まった手続きを大量に処理することはITの最も得意としているところです。
また、ITに大量処理を実行させることで人間がやるよりも正確な結果を得ることもできます。一度このような体験をしていると二度とITを利用しない大量処理を人間でやるなどという時代には戻れないことでしょう。
ただし、ここで注意が必要なのはITは正しいプログラムで実行していればミスは起きませんが、プログラムにはバグがつきものということです。
業務手続きが従来よりも少しでも変更されるのであれば、プログラムの見直し(必要により修正)が必要ですし、プログラムの利用を開始する際には入念なテストが必要となります。
このテストを疎かにするとITはテストしていなかった工程において大量のミスを生成することになる可能性を忘れてはいけません。
SIerはテストを十分に実行しようとしますが、ITシステムを発注する企業はテストの重要性を軽視しているケースも多いため、システム導入後にトラブルが発生するケースはなくなりません。業務で抑えるべきポイントがどこかをしっかりと見極めることは忘れてはいけません。
テストにより品質が担保されたITシステムは、必ずコスト削減を達成できるモノになります。
売上拡大
次にITによる売上拡大について考えてみます。ITによる売上拡大はコスト削減と比べると結果を出すのが難しい目的になります。結果を出すのが難しいというよりは、結果を正しく評価するのが難しいと考えた方が正しい解釈でしょう。
また、ITを入れたからといって効果的に利用できなければIT導入にかかったコストの方が増えた売上よりも多くなってしまうということもありますので、IT導入計画は売上拡大の効果を充分に予測して実行に移す必要があります。この点も売上拡大を目的にしたIT導入が難しいと考える点になります。
ITによる売上拡大という観点では、小売り業で考えるとわかり易い例があります。
単純に、従来は実店舗のみで販売していた業者が、インターネットショッピングサイト(ネットショップ)を開いて販路を拡大する方法があります。
これまでは店舗のみで販売していたところをネットショップという仮想店舗でも販売することによって販売チャネル(販路)が増えます。
また、実店舗ではお客は当該店舗にいかなければその店舗の商品を購入することはできませんが、ネットショップであればお客は店舗にいかずともその店舗の商品が購入できるため、商品の魅力があれば全国から注文を受けることが可能になります。
当然この際に在庫管理などをネットショップと実店舗の両方で行う必要などが出てきます。
ここでは各々の販売データを基にした需要予測をすることで在庫維持コストと機会損失のバランスを取る必要が出てくるでしょう。
このような計算を経営者が自分の頭の中だけでやるのは限界がありますので、ITを活用することでこれらの業務負荷を下げて売上拡大につなげるのです。
他にもITを活用したマーケティングなども売上拡大には貢献します。
ITを活用したマーケティングについては、またどこかで記事にしたいと思います。
まとめ
以上のようにIT活用は企業経営をする上で重要なコスト削減と売上拡大に寄与します。
しかし、最近のIT業界の風潮はDXをしようというようなコスト削減、売上拡大とどのように結びつくのかよくわからない言葉でITをよく知らない経営者をともすれば騙そうとしているように感じることがあります。
DXをしなければいけないのではなく、自社の経営にとって何が必要なのかを考えて、その目的達成のために必要な道具は何かということを常に忘れてはいけません。
自社の目的を達成するために、必要なITは何か、そのためにかけられるコストはどの程度か、それを達成できるパートナーとなりうるSIerやコンサルティング会社はどこか、といったように適切な順番で物事を考えていけばITにそれほど詳しくなくても、ITを活用できます。
まずはITを使うということではなく、目的を定めた上で、その目的達成のための有効な手段の選択肢の一つとしてITも候補にあがるのです。
また、間違えてはいけないのは、ITに詳しくないからと言って、自社が達成しようとしている目的(効果)以上のITを導入してはならないということです。
IT導入には相応のコストがかかるものではありますが、必ずしも導入コストと効果は期待通りにはなりません。
ITを充分に使いこなせていない場合は、使いこなせるように習熟度を上げればよいのですが、元々そこまでの効果がでないITもありますので、ITに詳しくない場合は他社事例の研究をすることもお勧めします。
もちろん、他社と自社の経営環境の違いを充分に調査した上で事例研究をしないとここでも間違えることにはなりますが、何の指標もないのであれば事例は有効なヒントになります。
IT導入は目的さえ明確であれば、そこまで難しいことではないので、DXのような流行り言葉に騙されることなく自社にとって有効なITを見極めてください。