Workers Wind

主に私の仕事に関する考え方と自分の知識・スキルを習得するために読んだ本、調べたこと、実施した結果などについて記載しているブログです。

言った言わないを回避するたった一つの方法

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ウォーターフォールモデルでシステム開発をしているとよくあるシチュエーションとして当初の開発プロジェクトの要件から外れた対応を顧客から求められることがあります。
この時さらに顧客からは予算がないので、契約金額内で追加の対応をしてほしいというような無茶なことを頼まれることもあります。


システム開発を生業としている私が勤めている会社でもしばしばこのような状況が発生します。
長くお付き合いのある顧客企業の場合には、損して得取れという考え方もあり、プロジェクトの全体採算や顧客との取引状況を考えて、対応可能と判断すれば追加要件を予算内で対応することもあります。
ただし、通常このようなケースでは当初の要件から作業が追加になっているため、他の要件を削って作業を減らし追加分の対応工数を捻出するか、追加分の対応工数分の費用を顧客に捻出してもらうことになります。


このケースで問題となることもあります。

例えば、顧客はプロジェクトの要件定義の際に要件を伝えていて、システム開発会社側が正しく要件を把握していなかったといういわゆる「言った言わない」に陥ってしまうことです。
この「言った言わない」のケースを回避するたった一つの方法は議事録を作成して、関係者間で常に合意を取りながらプロジェクトを進めるしかありません。
議事録作成の負荷を惜しんで、プロジェクトを遂行してしまうと後々前述のようなケースが発生して、結果として議事録作成以上のコストがかかるケースとなります。


以上のことからシステム開発をするときだけでなく、仕事において何か決める時には簡易なものでも構わないので議事録というか合意の証拠を口頭ではなく文書で残しておくことをオススメします。

 

では、議事録はどのように作成すべきなのかを説明します。

議事録の形式 

議事録の記載の形式には大きく以下の2点があります。

  1. 発言録形式
  2. 要約形式

発言録形式

発言録形式とは、誰が何を言ったかの発言をすべて記録する形式です。
発言録形式で議事録を作成する場合には会議を録音して文字起こしをすることが多いですね。作成時間は大体会議時間の3、4倍の時間がかかると言われています。

要約形式

要約形式とは、発言録形式と比べるとすべての発言を記録するのではなく、要点のみを議事録として記録する形式です。
議事録作成の負荷は発言録形式の作成時間で説明したように相当高いため、ほとんどの議事録は要約形式になっているのではないでしょうか。
最近では、音声認識技術が発展してきたことにより、機械的に議事録を作成するようなソフトも出てきておりますが、誰が言った発言かまでを特定するのが難しいため、まだ議事録作成には人の手が必要です。

議事録の形式はどちらでも良い

どちらの形式の議事録を作成するかは企業毎に違うと思いますが、私が勤める会社ではどちらかといえば要約形式の方が多いです。
というのも、会議で話している言葉を一字一句すべてを文章として書き起こすと何のことだかよくわからない文章になります。そのため、作成者が発言の行間を埋めるようなことをしており、結果として要約なのか会議を補完したものなのかわからなくなっています。当然、内容を補完するには会議の内容を完全に把握している必要があるため、しかりとした議事録を作成するには相応の経験とスキルが必要です。
結局、完全な発言録形式ではないとしても、会議で議論された内容を文書で残して関係者間で共有しておくことで、後々の「言った言わない」を防ぐには十分な効果を発揮します。

議事録に記載すべきもの

さて、議事録の形式によらず記載すべきものには以下の6点があります。

  1. 議事内容(発言録 or 要約)
  2. 会議の目的
  3. 決定事項
  4. 宿題(担当)と期限
  5. 出席者
  6. 日時と場所

記載の順番は順不同です。

企業や担当者によって多少の項目のズレはあるでしょうが、議事録の形式によらず上記の6点は議事録に必要な要素となります。
「言った言わない」の議論になる際に、例えば議事録に決定事項のみが書かれているとどのような経緯で決定されたかがわからずに正しい判断ができない状況だったのではないかということを言う顧客も時々います。単なるイチャモンです。
また、重要な決定の時に重要人物が会議に出席していなかったため、当該決定事項は無効と言ってくる顧客もいます。クレーマーです。

議事録を記載したら、当該プロジェクトの関係者全員がみて内容についていつまでに合意するという手順を必ず設けるようにしてください。

議事録を作成者は誰が適切か

議事録作成は、前述したように相当負荷の高い作業でかつ、(単なる文字起こしであれば)単純作業なわりに、重要度が高いという作業になります。
したがって誰もやりたがらないことが多いです。
私も正直議事録作成は好きではありません。
ただし、「言った言わない」を回避する唯一の方法であるため、誰かが作成せねばなりません。
この場合には、顧客との交渉により作成者を顧客とシステム開発会社間で持ち回り制にしてもらうということができればありがたいです。

しかし、通常はシステム開発会社が作成する方が多いでしょう。


システム開発会社としては議事録を作成することで、要件の理解を深めることができますし、プロジェクト管理としても議事録が重要な文書となるため、積極的に作成すべきです。
私が勤める会社では、業務の勉強として新入社員に議事録を作成してもらうことが多いですが、これは正直やめた方が良いです。
新入社員は経験が少ないため、プロジェクトの話がまったく頭に入ってきません。
会議を録音して文字起こしを頼んだとしても満足のいくものを作成できるまでには相当の時間がかかります。
これを新入社員にやってもらっている間に新入社員は仕事をキライになるでしょう。
新入社員に議事録を作成してもらうこと自体が悪いということではなく、成果物としてはしっかりと先輩社員が作成して徐々に新入社員が書いたものを成果物として利用できるようにしてあげるのが良いでしょうね。

まとめ

システム開発においては、顧客は業務に詳しいがシステムには詳しくない。

システム開発会社はシステムには詳しいが業務には詳しくない。

この顧客とシステム開発会社の担当者間の経験とスキルの違いにより、しばしば要件の認識相違が発生します。
システム開発会社の担当者にはシステムにも業務にも詳しいということが求められるのですが、正直実際に業務をやっている顧客の担当者と同等に業務がわかるような人材はなかなかおりません。
このような経験やスキルのアンマッチにより「言った言わない」は発生しているのです。
つまり「言った言わない」ではなく、実際には顧客とシステム開発会社の認識相違が問題の原因になっています。
議事録を作成することにより、文書として会議の内容を確認できるようになるため、お互いに同じ単語の意味を共有できていれば認識相違が起きる可能性を軽減できます。
議事録作成は、非常に負荷の高い作業ではありますが、重要な作業であることを念頭においてシステム開発会社は自分たちを守るためにもしっかりとした議事録を作成した方が良いでしょう。

 

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