Workers Wind

主に私の仕事に関する考え方と自分の知識・スキルを習得するために読んだ本、調べたこと、実施した結果などについて記載しているブログです。

RPAではDXできない

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もう特別定額給付金については記事にしないと書いたのですが、少し気になったので結局記事を書いてしまいます。

 

bookreviewwind.hatenablog.com

ただ、特別定額給付金を例には取りますが、メインはRobotics Process Automation(RPA)とDigital Transformation(DX)についての考察になります。

 

単刀直入に言うとRPAを使っている以上はDXは実現しません。

では、特別定額給付金での利用の仕方を例になぜDXが実現しないかを考えてみます。

DXとは

その前にまずDXについてのおさらいです。

DXとは、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というコンセプトに根差した考え方です。

企業活動にあてはめると企業を取り巻く市場環境のデジタル化に対応するため、企業が行うあらゆる経済活動やそれを構成するビジネスモデル、ならびに組織・文化・制度といった企業そのものを変革していく一連の取り組みであります。

RPAは変革を促さない

xtech.nikkei.com

今回の特別定額給付金の役所内の手続きにおいて、私も一時的にはRPAを利用するのが役所職員の作業負荷は低減できると考えておりました。

それが実行に移されたということで喜ばしいことではあります。

しかし、そもそもRPAは人が行っているコンピューターの操作を自動化することを目的としています。

つまり、基本的には業務の手続き自体は人がやっていた時と変わることがないのです。

もちろん、コンピューターが実行するため、人であれば業務時間中しか作業ができないとか人的ミスが発生するといったことはなくなります(かわりにプログラムや仕様のバグで止まることはある)。

RPAが当該作業を行っていた人の代わりの作業をすることで、人は他の作業を行うことができるのですが、そこで得た時間で人が変革を起こせるかは未知数です。

(というか別の無駄な作業をさせられることになるかもしれません。ハンコを押すだけの作業とか・・・)

RPAにより、業務の処理量を向上させることは可能なため、一見変革が起こったように思えますが、本質的には処理量が向上しただけであり、従来の業務の内容は変わっていないため、変革は起きていないのです。

変革を起こすためには

では、どうすればDXを実現することができるのかですが、まず核になるのはデジタル技術に関する理解を広げることだと思います。

技術の認識を正しく持つことで、現状の業務と照らし合わせた上でデジタル化して効率化できる業務はまだまだたくさん思いつくことができるようになるはずです。

次に、コストの認識も正しく持つ必要があります。

ほとんどの会社の企業活動において最もコストがかかっているのは人件費でしょう。

その人件費で無駄な作業をさせているのであれば、改めなければなりません。

デジタル技術を駆使することで、多くの作業は自動化することができますし、従業員の行動をデジタルデータで読み解くこともできるようになってきていることを認識した方が良いでしょう。

従業員は、経営者が本気でデジタル活用を考えた際には自分の仕事の状況がデジタル技術で丸裸にされる覚悟も持っておくべきです。

PCやIoT機器を使っている際には、業務に関係がない作業をしていることも筒抜けになります。

ただ、全ての業務をデジタル化する必要は当然ないと思われます。

自社のコア業務は何かを見極めることと、自社の市場における立ち位置、そして、今後どこに向かうかのビジョンを明確にした上で投資対コストが見合う分野を見極める必要があります。

なぜなら、デジタル化するためには現在デジタル化されていないのであれば、相応に初期費用およびランニング費用がかかるため、全ての業務に対応することは難しいからです。

まとめ

日本ではSIerが台頭しており、一般企業の経営者・従業員は本当にITに関する知識が足りないと感じることが多いです。

この状況はSIerに努める私にとってはありがたいことと捉えることもできます。一方で、ITをないがしろにしているがために、SIerを有力なビジネスパートナーと考える企業も少ないように感じます。

何かよくわからない高い見積もりをいつも出してくる会社と思われているように感じることもあります。

必ずしもITによる業務変革をすることが正しいという状況ではないとも思いますが、従来の延長線で考えるRPAではDXの推進という観点では遅れてしまいます。

一朝一夕でDXが成るわけではないため、まずRPAからはじめることが間違っているということではありません。

SIerの立場から考えれば今回の特別定額給付金のRPAの措置に関してはあくまでも急場しのぎであり、本質的には縦割りの行政システムをIT技術によりセキュリティを考慮した上で連動させることが本来の意味でDXを促進することにつながると考えています。

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