Workers Wind

主に私の仕事に関する考え方と自分の知識・スキルを習得するために読んだ本、調べたこと、実施した結果などについて記載しているブログです。

特別定額給付金のオンライン申請の後処理負荷を軽減する超法規的措置の考察

特別定額給付金のオンライン申請による各役所の作業負荷が大きく自治体によってはオンライン申請を中止するところが出てきております。

xtech.nikkei.com

システム開発を生業としている会社に勤めていると電子データで管理できているのに、何にそんなに負荷がかかるのかと考えてしまいますが、専門会社でなければ実際には対応できないというのが今の日本の実情なのだろうと今回の件で感じました。

では、どうするのが一番良かったのかというのを各種の規制については残念ながら把握していないので、システム開発の面と別の給付方法について考えてみます。

金融機関に口座情報とマイナンバーの紐づけ義務を検討

www3.nhk.or.jp

政府・与党は、給付金などを速やかに支給できるよう、マイナンバー制度を活用して、希望する人に振込先の口座を登録してもらう仕組みの導入を目指していて、現金10万円の一律給付で取得した口座情報のうち希望者の情報を保存し、今後の別の給付でも使えるようにする法整備を行う方針です。

今回の特別定額給付金の申請手続きにおいて最も役所の負荷が高いのは、申請者の振込口座の確認手続きであると考えております。

振込口座確認手続きにおいては、オンライン申請であろうが、郵送申請であろうが口座情報のコピーを目視確認する必要があるからです。

本件については、以下の記事でも触れております。

 

bookreviewwind.hatenablog.com

政府の検討は、今回の特別定額給付金申請の給付金振込処理には間に合いませんが、今後同じような給付金や税金の払い戻し処理などを行う際にはスムースな手続きができる可能性があるので速やかに検討すべきでしょう。

ただ、金融機関側がマイナンバーと口座情報を紐づけしたとしても、住民は複数口座を持っている可能性もあるでしょうから、金融機関側だけでなく役所側が住民の給付金等の振込先口座情報を把握(データ管理)しておく必要があるでしょう。

役所が住民への振込手続きをする際に、当該金融機関に口座情報とマイナンバーの称号を取れる仕組みを導入することで、今回のようなことが起きた際に、迅速に対応できるということですね。

オンライン申請時にANSERを活用

私は、今回の口座情報のコピーと申請者が入力する口座情報データを目視確認するようなアナログな手法ではなく、現状日本国内にあるシステムサービスを活用することで、デジタルで口座情報を確認する方法があったと考えています。 

その方法とは、NTTデータが提供しているANSERを活用する方法です。

ANSERは、金融機関が提供するオンラインバンキングのバックに控えているネットワークサービスでサービス利用者が振込時に指定する口座情報を照合して、振込手続きをすることができます。

当然NTTデータはもはや民間企業であるため、ANSERを利用するには初期費用も必要でしょうし、振込を実施するには振込手数料もかかりますので安易には利用できませんが、元々は国民の税金で作ったシステムなのでこのような状況であれば政府が本件に限り現状サービスを維持できる範囲で徴発しても良かったと思っております。

なお、この超巨大金融ネットワークサービスについては、公正取引委員会が独占禁止法に抵触するのではないかと調査に乗り出しております。

www.nikkei.com

たぶん、今回のオンライン申請をNTTデータが申請から振込までを完結させるシステムを構築したのであれば役所側の負荷はほとんどないシステムに仕上がったことでしょう。

他の金融系SIerであってもANSERを安価に利用できるのであれば、同様のことが実現できるでしょう。

それぐらい金融系SIerにとっては有名なサービスですが、これが一民間企業であるNTTデータに抑えられているため、金融系SI市場においてはNTTデータがとても強いという状況になっているのです。

まぁ、これだけで独占禁止法に抵触するということはないでしょうが、ちょっと、いや、かなりうらやましい状況ではあります。

 

話がだいぶそれました。

今回マイナンバーカードの電子証明書を利用することで、オンライン申請においては申請者の本人確認は申請時点で完結しています。そのため、申請時のアップロード情報として身分証明書のコピーは求められません。(世帯住民の情報の突合ができませんでしたが・・・)

役所側は住民のカナ名情報も保持しているため、オンライン申請時に申請者のカナ名情報と申請者が入力した口座情報をANSERで照合して、カナ名が合ったところで振込手続きを実行する仕組みを構築すれば役所の負荷はまったくなかったでしょう。

ただし、世帯住民すべてを給付金申請対象とするのではなく、マイナンバーカードを保持している当人のみに給付金申請をする場合に限りますけどね。

世帯住民までを含めるには、住民基本台帳システムとの連携が必要となるのですが、これは各自治体管理のシステムということで早急に支給することを優先するとそれらの接続は時限的に困難になるでしょう。

なお、ANSERについては悪用されて口座情報の照会のみされることをさけるため、誰でも利用できるわけではありませんし、原則口座情報照会は振込手続きをすることが前提で利用できるサービスとなっています。

払出振替証書の発行ではダメだったのか

ここまでシステムについて考えてきましたが、今回の特別定額給付金申請において早く住民に給付するということであれば、一番早かったのは払出振替証書を各世帯に送付することだったのではないだろうかと考えております。

申請書を郵送して返送するという手間が住民としては省けますし、そもそも住民が申請しないので誤った申請手続きを取ることもないでしょう。

書留で送付すれば確実に住民が受け取れるはずです。(海外出張中で受け取れないとかもありますが、これは郵送申請でも同じです。唯一、マイナンバーカードを持っていれば出張中でも申請できる可能性がありますね。そういう意味でもしっかりとしたシステムを提供してほしかったです。)

また、DV等の影響により在宅しておらず払出振替証書が受け取れない可能性があるということもあるでしょうが、これも郵送申請の際と同様の考え方ですね。あらかじめ役所に申し入れをしておくことで世帯住民全員の給付金金額で払出振替証書を発送しなければ良いでしょう。ニュースメディアに触れておらず当該手続きを実施できない場合はやむなしでしょう。

払出振替証書で支給する場合には、ゆうちょ銀行および郵便局の対応でキャパシティオーバーとなることは予測されますが、これについては各世帯に届けるタイミングをずらすことである程度のコントロールはできるでしょう。

まとめ

国民全体に早急に給付金を支給するという観点ではオンライン申請は非常に良いというのが私の意見ではあります。しかし、以前から書いているように完全に要件不備案件となっております。そのうち日経コンピュータの「動かないコンピュータ」で詳しく解説してくれることを望みます。

また、郵送申請であっても口座情報の照合には相応の負荷がかかるため、実際の振込手続きには相応の時間がかかるでしょうから、本当に給付金が必要な人にすぐに支給できる施策ではなくなるでしょうね。

役所側では前年度の情報にはなりますが、住民の年収がある程度わかるのでしょうからそれを基に払出振替証書の郵送順位を考えて給付金を支給することを考えた方がシステム化が正常に進んでいない状況ではよかったのではないかと思います。

もしくは超法規的措置として、本対応に応じてのみ入札なしでNTTデータに依頼し、ANSERの有効活用を検討しても良かったのではないでしょうか。

現状をみると政府はなんだかんだがんばっていますという姿勢だけをみせるだけである程度金銭に余裕のある世帯には時間がかかりそうだからという理由で給付金を諦めさせようとしているのではないかと勘ぐってしまう私がいます。

 

給付金については、よっぽどのことがない限りは本記事で締めとすることにいたします。 

【スポンサーリンク】