Workers Wind

主に私の仕事に関する考え方と自分の知識・スキルを習得するために読んだ本、調べたこと、実施した結果などについて記載しているブログです。

COCOAアプリの不具合から受託開発の難しさを再確認

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新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)で2020年9月末のアップデートにより、Android版のアプリでは接触通知が届かなくなっていた不具合が発覚しました。

発覚した経緯が、Twitter等のSNSによる書き込みからというので最近のSNSの情報拡散能力には本当に舌を巻きます。

 

COCOAの不具合については菅総理もお粗末だったと言っておりますとおり、一番根幹の機能がなぜ動かなくなったのかをしっかりと原因究明してほしいところです。

 

COCOAアプリの開発を受託しているパーソルプロセス&テクノロジーもバグ改修や保守を担当しているエムティーアイもそれなりの規模のシステム会社のようですが、今回の件の不備を事前に検出できないというのは、テストプロセスに大きな問題をはらんでいたとしか思えませんね。

xtech.nikkei.com

iPhone版には不具合がなかったことを考えるとAndroid版ならではの難しさがあったのでしょうか。

それとも、iPhone版でテストして問題ないから、Android版ではテストを省略してしまったとかなのか、第三者的にみるとこの機能のテストが十分に行えていないとか、そもそもテストしていなかったとしか思えないんだけどというレベルです。

 

このような問題があると受託開発会社の品質に関する考え方に問題があったかのようにIT会社が悪者になるケースが多いように感じているのですが、IT会社に勤める私の視点では委託者側(この場合は厚生労働省)の受け入れ体制や依頼事項、予算、納期に問題がなかったのかという点も気になります。

 

多くのケースにおいて、IT会社は決められた予算、納期、要件に対して最大限の力で開発して納品しております。

しかし、そもそも要件に対して予算や納期が十分に確保されていない場合には、プロジェクト自体が暗礁に乗り上げることがしばしばあります。

それでも、一度受託したからには最後までまっとうしようとするのがIT会社です。

そして、そんな状態になったプロジェクトは大体失敗するのです。

 

本質的には、要件に対して予算、納期が十分でない案件はIT会社は引き受けるべきではありません。

しかし、プロジェクト開始時点で要件が明確になっているというケースも実は稀なため、プロジェクトを進めていくうちに予算、納期が足りなくなっていくというのがしばしば起こります。

 

顧客の予算には制限があることが常のため、要件が膨らんだ場合や想定していた要件よりも複雑な要件が隠れていた場合などは、IT会社のプロジェクトマネージャは要件の調整をしなければなりません。

しかし、プロジェクトオーナーの委託者の力が強い場合は、この要件調整が上手くいかずにやはりプロジェクトは失敗するのです。

 

ここでいう失敗には主に2つのパターンがあります。

 

一つは、委託者、受託者双方にとっての失敗。

この場合は、委託者は受託者を相手に損害賠償請求をしたりもします。

 

もう一つは、受託者にとっての失敗。

委託者の要件は満たされるも、受託者側は想定していた収益が得られなかったり、開発者が疲弊してしまい会社を去ってしまったりと受託者にとってはあまりいいことがありません。

 

委託者、受託者にとっての失敗のパターンでは、双方痛み分けということもあります。

多くのプロジェクトではこの双方痛み分けか受託者にとっての失敗が多いのではないでしょうか。

これは、受託者は開発しなければ業績があがらないため、多少無理と思った案件でも受託してしまうケースが多いからです。

 

はじめのシステム開発をたとえ失敗しても委託者にとって重要なシステムであれば、受託者側は保守・運用フェーズでこの失敗を回収していくという考えもあります。

 

ただ、この初期の失敗プロジェクトを経験するのは果たしてIT会社、またそこの開発者にとって良いことなのかどうかが正直私にはわかりません。

デスマーチを経験しないと成長しないみたいな体育会系な意見もありますし、トラブルで成長するというのは、私の経験上も嘘ではないと実感しているため、何とも言えないところです。

ただ、デスマーチプロジェクトが常態化してしまうと早晩その会社は崩壊するというのは言うまでもありません。

 

システム開発プロジェクトは本来、委託者と受託者の信頼関係によって双方の力でプロジェクトを成功に導くのが理想です。

しかし、多くの委託者はお客様思考により、受託者にシステム開発を丸投げするケースが後を絶ちません。行政システムもそんな感じなので、無駄に血税を消費して使えないシステムを開発しているシステム会社が実は潤っているという状況も垣間見えます。

 

なんだか大変不毛な業界だなと感じている今日この頃ではありますが、デジタル庁の設立にあたっては私の想定以上の応募があったようで、志のある技術者が日本の行政システム開発を支えてくれて行政のデジタル化をしっかり推進してくれることを望みます。

 

e-Japan構想とか構想自体はすごくよかったのですが、まったく中身がないものでしたからね。

今回のデジタル庁こそ理想が実現されることを期待します。

 

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