Workers Wind

主に私の仕事に関する考え方と自分の知識・スキルを習得するために読んだ本、調べたこと、実施した結果などについて記載しているブログです。

SIerの仕事がなくなる序曲か?

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特別定額給付金関係のニュースでは、各自治体のシステム化が進んでおらずオンライン申請はあきらめたという自治体もあり、結構大変そうだなと感じておりました。

そんな状態にやきもきしたので、私なりにシステム化の方向性を考えてもみました。

 

bookreviewwind.hatenablog.com

そんなときに以下のニュースを読みまして、神戸市の対応がすごいと感心しました。

ascii.jp

神戸市の久元喜造市長は、「特別定額給付金は、すべての市民が対象であり、市民の関心が大変高い。そのため、コールセンターに寄せられる問い合わせ件数は、ピーク時には、1日4万件に達した。だが、対応体制や電話回線には限りがあった。また、電話対応では、聴覚障がいの方への対応が困難という課題があった」と振り返る。

そこで、「特別定額給付金の申請状況等確認サービス」を開発。申請書に記載されている10桁の申請者番号を入力すると、「審査中」「振込⼿続き中」「振込済み」「保留中」のいずれかのステータスが表⽰され、現在の状況が確認できるサービスを開始したのだ。

同サービスへアクセス数は、1日約3万5000件となり、その一方で、コールセンターへの問い合わせは、約3000件に減少したという。

Microsoft Power Platformを利用して自治体職員が一人で作成したサイトの効果によりコールセンターへの問い合わせが激減したというのです。

もともとこの職員はシステム会社に勤めていてシステム開発経験があったということではありますが、一人で情報共有サイトが作成できてしまうという事態に脅威を覚えています。

クラウドサービスとローコードプラットフォーム

なぜ一人で情報共有サイトが1週間程度で作成できてしまうのかという点については、 Microsoftが自治体向けに半年間無償提供しているMicrosoft Power Platformの存在が大きいですね。

Power Platformを利用することで、開発者はプログラミング言語を知らなくてもシステム開発ができてしまうのです。

プログラミング言語を知らず、プログラミング言語を書かずともシステム開発ができる環境のことをローコードプラットフォームというのですが、最近のシステム開発ではこのような環境の利用が進んできていると感じています。

さらに、このローコードプラットフォームがクラウドサービスとして提供されているために、アイデアがあればシステムを動かすサーバ機器を購入して構築作業をしなくともアイデアが思いついたらすぐにシステム開発ができてしまうのです。

ローコードプラットフォームであってもシステム開発をする以上は、機能要件や非機能要件を定義して、クラウドサービスの稼働設定をしたりする必要はあります。

しかし、これらも想定している利用目的やアクセス数などからパラメータ設定をすることで要件を満たすことが容易にできるのです。

セキュリティ対策が気になって自社環境内でしかサーバ機器を稼働させたくないとか言っている場合ではない状況に追い込まれればこのようなことができる人材が自治体にもいるというのはSIerからみれば脅威でしかないでしょう。

その気になれば、SIerの顧客が自分でシステム開発できる環境が整っていることが証明されてしまったのです。

システム開発は誰でもできるわけではない

クラウドサービス上のローコードプラットフォームはSIerにとっては脅威でもあり、機会でもあります。なぜなら、今回の神戸市の例で考えれば結局はシステム開発経験者がこの環境を利用してシステム開発しているからです。

つまり専門家は今の状況であっても必要なのです。

一方で、一人でシステム開発できるという状況には留意しなければならないですね。

従来型のシステム開発はインフラ技術者、アプリケーション開発者、プロジェクトマネージャーなど様々な得意分野をもった専門家が集まって行っています。

しかし、超高品質のシステムを求めずにトライアンドエラーが許されるシステムであれば、インフラの基礎知識があるアプリケーション開発者のみでもシステム開発ができます。そのアプリケーション開発者もプログラミング言語が書けなくても良いのです。そうするとインフラ技術者でもアプリケーション開発の知識があればシステム開発できそうですね。

ただし、利用するローコードプラットフォームの知識は当然必要になります。

まぁ、これはプログラミング言語を覚えるよりも簡単ではあります。

テストの勘所は必要

最後に、システムの品質はテストで担保するのが私たちSIerの常識です。

しかし、SIer主導ではないシステム開発においては、品質の作りこみという概念は必要ないと考えます。

作成するシステムで何が起きてはいけないかの優先順位を考えた上で、その起きてはいけない事象の対策をテストで担保するのか、起きた際の対策を準備しておくかの方針を決めてしまえばよいでしょう。起きてはいけない事業が複数あればその個数分について準備します。

この工程の網羅性の担保は知識と経験が必要な領域ではありますが、自社で作成するシステムにおいては品質を緩く考えることもできるでしょうから、作成するシステムの重要度によってどこまで深く検討するかを考えれば良いでしょう。

まとめ

今後、Microsoft Power Platformのようなクラウド上のローコード環境はもっと利用されていくでしょう。

そうなってくると現在SIerに努めている技術者が顧客企業に転職して顧客企業側でシステム開発をするといったことも今よりも増えてくるように思います。

これはある意味システム開発としては健全な状況になるということです。なぜなら業務は顧客企業の方がSIerよりも圧倒的に詳しいため、システム開発における業務要件の認識齟齬が起きづらいからです。

とはいえ、顧客企業内でシステム開発をする際にシステム開発者と業務担当者がしっかりと連携できないのであれば、結局はそのシステム開発は失敗しますので、お互いの協力関係を作るのが重要です。

 

今回の事例では、SIerの仕事が減っていく環境が徐々に作られてきていると感じました。

自社サービスを持たないSIerは今後この脅威にさらされていくことになるかもしれません。

市場環境をよく観察して、SIだけでない収益の軸を持っていないSIerは近い市場から淘汰されてしまうかもしれない・・・

 

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