現在のIT業界バズワードとしては、DX、AI、RPAなんかが上位にランクインするのでしょうか。
私もかつてお客様の希望によりAIと標榜しているサービスを販売したことはありますし、今でも営業トークでAIを使います。
とはいえ、私はかつてのAIサービス販売経験により、お客様の過剰なAIに対する期待は提案段階で打ち砕くことにしています。
では、AIに対するお客様の過剰な期待についていくつか例を紹介します。
AIは自動で学習しない
私のお客様AI勘違いランキング1位は、AIは自動で学習しないです。
これは機械学習の教師有データ、教師無データという話ではありません。
例えば、AIチャットボットサービスを導入した際に、自動学習を強みとして販売しているサービスがあったとしても業務で使えるレベルにするには自動学習は機能しません。
自動学習した結果は、業務では使い物にならないのです。
つまりたとえ自動学習を強みしているAIチャットボットサービスがあっても、業務で使えるレベルにするには人の手で育てる必要があるのです。
この人の手で育てる業務は、従来であればFAQシステムの内容を充実させるような業務と同じことをAIチャットボットに形を変えて実施しているのとほぼ同じことをすることになります。
データ入力の方法やデータ管理の方法はFAQシステムとAIチャットボットで異なりますが、本質的な業務内容は同じです。
自動学習を強みにしているAIチャットボットサービスの方が入力支援や管理支援機能が従来のFAQシステムよりも充実しているくらいの差はあります。
しかし、AIは自動で学習する段階には至っていないのです。
自動学習段階に至っていないのは、特定の業務データ分析AIも同じです。
ビッグデータ分析サービスによりデータの特徴量分析は自動で行うことはできますが、これは既に誰かの手でモデル分析のロジックを組み込まれているだけです。
当然プログラムなので、毎回同じ手順を踏まなくても良いのですが、何度も言いますがAIが自動で学習した結果ではなく、誰かのノウハウが形になっているだけなのです。
ここでお伝えしたいのは、AIはまだ自動学習段階にいないということ。
従って、AIを使うのであれば自社が当該AI利用分野の第一人者になるつもりで人的リソースを惜しみなく投入する覚悟をもってやってほしいということです。
AIを使うことが目的になっていると何も達成できない
お客様AI勘違いランキング2位はAIを使うことが目的になっているです。
上司からAIを使えと言われたという担当者の可哀そうなこと。同情を禁じ得ないです。
AIが流行っているから自社でもAIを使ってみたいという研究事態が目的であれば、目的も達成できます。
しかし、AIで何か成果を出せと言われているとしたら、何も成果は出ません。
「何かって何よ?」とそのような上司には質問してあげた方が眼も覚めるでしょう。
何か業務上の課題があり、これを解決するいくつかの解決案の中にAIを使う案がないmのであれば、AIは使わない方が良いです。
AIを業務で使えるようにするまでには、どこかで成功しているモデルを移植するケースではない限り相当の人的負荷がかかります。
また、どこかで成功しているモデルでも自社に適用できるかは検証が必要です。
結局は、課題ありきでその課題を解決するための最適解を選んでいないのであれば、AIを利用しても効果が出るわけがないのです。
AIは使えないことがわかったというAIにとっては不名誉な効果が出てしまいます。
まとめ
AIについては、確かにハードウェアのパフォーマンス向上により大量データの高速処理が可能になり、脳科学の進化によりAIソフトウェアの技術向上も急速に進んでいるため、特定分野では目覚ましい結果も出てきています。
例えば、人が相当の負荷をかけて特定領域の手続きを人がやるよりも速く正確に処理できるAIも存在しています。
しかし、だからといって自社にAIを使うことを目的としてAIを導入したところで、何も生み出しません。
AIという言葉のカバーしている範囲が広すぎるのです。
従って、私はAIを導入することを目的にしているお客様がいれば、本当に解決したい目的を確認するようにしています。
そして、特に解決したい目的が明確になっていないのであれば、AIを導入することはオススメしません。というか、解決したい目的が明確になっていない状況では何も提案できません。
研究開発は専門家に任せてお客様は自社の課題は何かを真剣に見つめていただき、その結果を相談してくだされば最適なソリューションをSIerはご提供します。
くれぐれもよく聞くIT業界バズワードに惑わされないようにご注意願います。